第9回 犬の毛包虫症

毛包虫(もうほうちゅう)とは何ぞや。聞き慣れない名前だと思うが、別名ニキビダニ、またはアカラスと言われたら聞いたことがある人もいるのでは?

犬の毛包虫は、犬の毛穴の奥に住むダニの仲間である。でもダニといっても形は全然ダニに似ていないし、とても小さくて肉眼では見えない。

この毛包虫、少々毛穴にいる分には問題がないのだが、毛穴の奥で大発生すると皮膚病を引き起こす。
症状としては、かさぶたができて毛が抜けたりする。獣医学の専門書には、「あまりかゆがらない」みたいなことが書かれていたりすることもあるが、かゆみが強いこともある。

大抵わんちゃんは自分の力で毛包虫が増えないように抑えることができるのだが、持病があったり、免疫力が下がるような要因(例 ステロイドをずっと飲んでいたりする)がわんちゃん側にあると毛包虫が増えることがある。

そんなときは薬で退治するのだが、ここで気をつけなければならないことがある。

まずは治療を受ける子がフィラリアにかかっていないことが大前提になる。
というのは、治療薬の代表的なものがフィラリアの予防薬と同じ成分の薬で、濃度を高くして使うからだ。
愛犬家のみなさんならご承知かと思うが、フィラリアの予防薬はフィラリア成虫に感染したわんちゃんに投与すると副作用が起きることがあり、場合によっては命にかかわる事態に発展しかねないリスクがある。だから毎年フィラリア予防薬を飲ませる前に、フィラリアの成虫がいないか血液検査をして一応大丈夫なことを確認するのだ。

しかしフィラリアに感染していると、フィラリアと同じ成分の薬を使った毛包虫の治療ができなくなるので別の方法を考えなければならない。別の薬はあるにはあるが、農薬系の薬であり、その薬を毛包虫のわんちゃんの体にかけることになるので、わんちゃんへの副作用はもちろん、投与する人も扱いに注意が必要である。それから目や口の周りの病変には薬をかけることが難しいという難点がある。

だったらフィラリア成虫をまず退治する?!

でもフィラリア成虫の駆除ってとても大変。注射で成虫を駆除することは可能だが、死んだフィラリアが肺の血管に詰まって自分自身が死なないようにわんちゃんは何カ月にもわたって安静な生活を送らなければならない。

そもそも蚊の活動時期にフィラリア予防薬をしっかり飲んでいれば、こんなめんどうなことにはならなかったのだ・・・

今年みたいに天候不順の年は、飼い主さんが「今日は雨だから動物病院へ行くのはやめておこう」「今日は暑いからパス」みたいな感じで予防薬をもらいに行くのを伸ばし伸ばしにしているうちに夏が終わってしまわないか心配である。この文章を読んでいる人は大丈夫だと思うが、フィラリアの予防はきちんと行ってくださいね。

次回は毛包虫の治療をするにあたって注意が必要な犬種について。牧羊犬系を飼っている方は、必見。
FC2 Management
プロフィール

Author:marurie12
女性獣医師
獣医学の分野では、皮膚病、腫瘍、動物行動学(ペットの問題行動)、内科学全般に興味があります。単にペットの病気のことだけではなく、人と動物がいっしょにより良く暮らしていくにはどうしたらよいか、何かヒントになるようなブログにしたいと考えています。
メール:sophia_vet@orchid.plala.or.jp

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR